1978年、写真家十文字美信はハワイはホノルルのダウンタウンで、ひとりの日系移民の老人と知り合った。その老人は13歳のときに両親を追ってサンフランシスコに渡り、旅芸人となり全米を巡業しハワイに落ち着いたという。「移民の歴史を知ることには興味がなかった。一人ひとりの人間を見つめることが興味のすべてだった・・・」と語る十文字美信は、数奇な運命とたわむれながらもたくましく生き抜く彼ら日系移民に人間の強さや弱さを垣間見た。才気鋭いユニークなドキュメンタリー作品に対して、第5回の伊奈信男賞が贈られた。
1947年神奈川県生まれ。神奈川工業高等学校木材工芸科卒。神奈川県工業試験所勤務を経て篠山紀信氏に師事。1975~1979年ADC賞受賞。日本写真協会新人賞、土門拳賞など受賞多数。
写真集「桂離宮」「澄み透った闇」「黄金風天人」