広島に人類史上初の核爆弾が投下され、多くの人命が一瞬にして奪われたのは、1945年8月だが、原爆の恐怖はその後も放射能の恐怖として生き残ったものを苦しめ続けた。いわゆる原爆症の発病の恐れと闘いながら生きる人々の手記として知られる「原爆の子」(昭和26年岩波書店刊)をヒントに、土田ヒロミはルポライターの吹上巡一郎と追跡レポートしたのがきっかけで、以後広島への取材をライフワークとする。伊奈信男賞の受賞作はその第一作で、不安をかこちながら精一杯生きる被爆者の今日が温かく綴られた写真作品である。
1934年福井県生まれ。ニッコールクラブ常任幹事、大阪芸術大学教授。
第8回太陽賞、第3回伊奈信男賞、第34回日本写真協会年度賞など、受賞多数。