第1回の伊奈信男賞の受賞対象作品となったのが、この山村雅昭の『植物に』であり、この作品は暗闇で息づく植物の様々な生態を46点のモノクローム写真に仕立てたものである。植物を花鳥風月的な叙情性で括るのではなく、まるで植物たちに個有の意思や精神が具わっているかのようにさえ見えてくる。それは秀れた写真技術により、対象となった植物を造形的かつ美的で詩的に表現しえた結果であり、その点が評価された。
1939年大阪生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。1987年没。
カメラ毎日月例年度賞受賞(1960年、1961年)。
個展「奢りへの戴冠」(1969年)、「植物に」(1976年)、「植物II」(1977年)。
写真集「植物に」「花狩」。