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PAGETOP
Vol.
06

小林紀晴 × AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G

50mm f/1.4。ゆるぎなく、そして明晰な視野。

06
生きる。その根源にある“力”を見つめ続けていたい。幼い頃、故郷の長野県諏訪で見た御柱祭(おんばしらさい)。巨大な柱の上に人を乗せて急坂を下る“木落し”に、まるで何かが憑いたような形相をした父の姿があった。神事を通じ、神聖なるものとひとつになることもまた、人が生きる“力”の源である。同じ長野に伝わる、新野(にいの)の“雪祭り”。毎年1月14日の夜から行われ、その年の豊作を祈願し、神前で朝まで神楽や狂言、田楽などが繰り広げられる鎌倉・室町時代からの民俗である。日本の芸能の源流を成すものとして、重要無形民俗文化財にも指定されている。
(次へ続く↘)

メインカット

・カメラ : D800 ・レンズ : AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G ・画質モード : 14ビットRAW(NEF) ・撮影モード : マニュアル、1/100秒、f/4 ・ホワイトバランス : 晴天 ・ISO感度 : 400 ・ピクチャーコントロール : ポートレート

作品2:幸法(さいほう)の舞1

・カメラ:D800・レンズ:AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G・画質モード:14ビットRAW(NEF)・撮影モード:マニュアル、1/160 秒、f/6.3・ホワイトバランス:晴天・ISO感度:400・ピクチャーコントロール:ポートレート
06
この日は、明るい開放絞り値と高い解像力の50mm f/1.4で、幻想的な真夜中の祭りを撮ることが狙いだった。カメラボディーはその情景を高画素で描写するためのD800。奇しくも当日の朝から、30cmの雪が積もった神社の庭を舞台に、次々と古典芸能が披露される。そしてマイナス10℃の寒さが体にしみ入る頃、代表的な舞のひとつである“競馬(きょうまん)”が登場した。舞人が馬形の手綱を操り、飛び跳ねながら移動して弓矢で的を射る。普段から使い慣れた、肉眼に近い画角のレンズで近づきシャッターをきる。
(次へ続く↙)
06
深夜の境内、スピードライト無しという厳しい条件だが、祭りの雰囲気全体を捉えるため、あえてf/4まで絞り込んだ。その結果、適度な被写界深度と、大口径の明るいレンズならではの優れた描写力で、舞人の指先から艶やかな装束の色彩やディテールまでをシャープに描くことはもちろん、奥に控える氏子たちの存在感も捉えることができた。白い雪の舞台で人と神がひとつになる瞬間。まるで絵画のような一枚となった。これからも、人の生きる力を追い続ける ―― 私のNIKKORで。

作品3:幸法の舞2

・カメラ:D800・レンズ:AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G・画質モード:14ビットRAW(NEF)・撮影モード:マニュアル、1/125 秒、f/5.6・ホワイトバランス:晴天・ISO感度:500・ピクチャーコントロール:ポートレート

PHOTOGRAPHER

小林紀晴(こばやし きせい)

NIKKOR

AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G

BEHIND THE SCENE

撮影レポート
01
真夜中の山奥で行われる祭り

  • この日の祭りは新野の諏訪神社から始まる


  • 雪道を伊豆神社までねり歩く


  • 深夜、目指す祭事の行われる伊豆神社へ


  • 狭く長い階段を登る

1月14日、大雪となった関東・甲信越。長野県南端に位置するここ新野も朝から降り出した雪が約30cmも積もり、奇しくも絶好の祭り日和となりました。聞けば、昔から不思議とこの日は雪になることが多いそうです。この日の祭りは下伊那群阿南町新野の中心街の北に位置する諏訪神社を午後4時ごろに出発する“お上り”から始まります。1時間半ほどかけてゆっくりと、街を通り過ぎ西側の山にある伊豆神社まで移動し、そこでさまざまな儀式が行われます。祭りの本番は日付が替わった真夜中、大松明に火が灯されてから。我々はそのタイミングに合わせて、午後11時過ぎに雪の積もった参道を神社へと向かいました。樹々の間を縫うような山道を抜け、細く長い石段を登り切ってようやく到着。歴史ある厳かな社殿が雪景色の中に浮かび上がります。
02
幻想的な雪の庭を舞台に、古の芸能が披露される

  • 雪化粧した伊豆神社の社殿


  • D800+AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G


  • 午前1時過ぎ、左の大松明に火が灯される


  • 庭の舞台で演じられる、幸法(さいほう)の舞

新野の雪祭りの起源は鎌倉時代とも室町時代とも言われています。雪を稲の花に見立てて豊作の祈りを込めた神聖な祭事。伊豆神社の境内で田楽を主軸に神楽、翁芸、狂言、田遊びなど十数種の芸能が夜通し演じられます。大正15年に、国学院大学教授の折口信夫博士が、日本芸能を研究する上で貴重なものであると紹介し、以来多くの研究者が訪れているそうです。午前1時過ぎ、大松明に火が灯され、いよいよ祭りの本番。今回の撮影テーマは、小林先生が普段からよく使っている50mm f/1.4の、大口径レンズならではの優れた描写力で、祭りの情景を写し撮ること。ボディーは、やはり先生が最近メインで使用しているD800。約3600万画素の高画素によって、レンズの解像力を最大限に活かすためです。多彩なシーンを捉えるためスピードライトも用意しました。舞台は祭りの主役ともいえる、幸法(さいほう)、茂登喜(もどき)の舞と続き、真夜中の祭りは益々その神秘を深めていきます。
03
大口径の単焦点標準レンズだからこその一枚

  • 特徴ある装束の競馬(きょうまん)


  • アグレッシブにシャッターをきり続ける小林先生

寒さが体の芯までしみ込む午前4時半ごろ、凍てつく雪の庭に、ひときわ艶やかな舞人が登場しました。この祭りの目玉のひとつである競馬(きょうまん)です。馬形と呼ばれる奇抜な装束を身につけ、手綱を操りながら前後左右に飛び跳ねながら舞台を移動し、弓と矢で的を射ます。小林先生も素早く移動しながら舞人に近づきシャッターをきります。実は、周囲を多くの見物客や写真家の人々が取り囲んでおり、ベストなポジションを確保することは容易ではないのですが、取り回しのよい小型・軽量のレンズで迷うことなく、次々と位置を変えながら撮り続けます。そして、今回のベストショットが生まれました。夜の神社の境内、スピードライトを使用しない難しい条件ながら、ISO感度は400に設定し、絞りはf/4まであえて絞ったそうです。大口径レンズならではの優れた解像力と適度な被写界深度によって、舞人の凛々しく艶やかな姿を克明に描写するとともに、雪の舞台の奥行きと雰囲気全体を見事に捉えた一枚となりました。まるでレンブラントの絵画のようなドラマを感じさせます。

こちらに掲載されている情報は、2013年2月現在のものです。

DATA

撮影日: 2013.1.14-15
写真家: Kisei Kobayashi
レンズ : AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
カメラボディー : Nikon D800
キーワード : その他
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