タイムラプスムービー

TIME-LAPSE MOVIE

先鋭感あふれるタイムラプスムービーを
写真家 山野泰照によるレクチャー

作品例

MOVIE

海に沈む天の川(14mm)

天の川の中でも一番賑やかな領域で、天の川が海に注ぐような構図を狙った。日没後、次第に空が暗くなり雲のように星々が見え始め、最後は川のように見えるよう意識した。被写体の明るさには大きな変化があるが、カメラが、露出時間とISO感度をコントロールし常に適正露出を保ってくれるところが素晴らしい。

夏の大三角(28mm)

夏の大三角は9月下旬の夕方、日本では天頂付近に見える。天頂は最も空が暗く、空の明るさによるかぶりが少ないため、F値1.4の明るいレンズでより暗い星を写すことを狙った。天の川の撮影と同じように、カメラが常に適正露出を保ってくれるため、空の明るさで暗い星が消える不安のないことが嬉しい。

Photographer

Yasuteru Yamano /山野泰照(やまの やすてる)

写真家、写真技術研究家。1954年、香川県生まれ。1970年代から天文雑誌での作品発表や記事の執筆を行う。2000年以降、デジタルフォト、デジタル天体写真に関する発表や記事を多数手掛け、著書として「デジカメではじめるデジタルフォトライフ」、「驚異! デジカメだけで月面や土星の輪が撮れる—ニコンCOOLPIX P900天体撮影テクニック」などがある。一般社団法人日本写真学会会員(SPIJ)、公益財団法人冷泉家時雨亭文庫会員。

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タイムラプスムービーについて

タイムラプスムービーは、静止画では表現できない、時間の経過による風景や状況の変化などを動画として伝える手法。基本的にはインターバル撮影で連続的に撮影した静止画から動画に仕上げるのだが「D850」はカメラ内にインターバル撮影とその後の動画ファイルをつくるタイムラプス動画機能があるため、簡単に作成することができる。表現として動きを速く見せるだけでなく、高い解像度が必要な場合や、暗い被写体を動画で見せたい場合には特に有効で、より高度な動画制作の世界からも注目されている。タイムラプスムービーの素材を撮影する機材として「D810」のインターバル撮影機能が高い評価を受けているが「D850」はさらに進化した。最短撮影間隔が0.5秒になるなど基本的な部分の進化に加え、昼間から日が暮れるまでといった被写体の明るさが大きく変化するような状況でも、絞り優先オートなどの自動露出で適正露出を維持できるだけでなく、低輝度の被写体への対応能力が飛躍的に向上し満天の星空まで撮影できるようになっている。だからこそ、同じタイムラプスムービーでも、今まで自動では撮れなかった満天の星空になるまでのタイムラプスムービーに挑んでみたかった。

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撮影場所決定までのプロセス

撮りたいのは夕暮れ時から日が暮れて満天の星空が現れるシーン。夏から秋にかけて、満天の星空が素晴らしい被写体は天の川である。夕方から少しずつ空が暗くなり、私たちの太陽系が属する、天の川銀河の中心方向が見え始めるタイミングと構図で撮るためには、南の空が開けているだけでなく、空が暗い場所でなくてはならない。空が暗いということは、都会のような人工の光が少ないだけでなく、月が出ているとその影響を受けるので、日没後の数時間は月が出ていない時期でなければならないという制約がある。今回、約3カ月にわたり新月のころを狙って計画を立てたが、天候の関係で望んだ結果を得ることができなかった。必ず満天の星空を撮るという態勢で天候も睨みながら臨んだロケーションが、沖縄県の小浜島であった。

写真:沖縄県小浜島の海と空

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撮影ポイントの決定とセッティング

撮影ポイントは、撮影中の安全も考慮してホテルの敷地内とした。さらに人が来ないこと、人工の光の影響が少ないことなどを条件とした。三脚は遠征時に常用している比較的小型の最大径28mmのカーボン製。風があると最大径32mm以上の重いものが望ましいが、車ではなく公共交通機関を利用する遠征時には運搬のことも考えて最大径28mmを使用している。カメラボディーのストラップは、風にあおられたり、誤って引っかけたりすることのないよう、外すか束ねることが基本である。レンズは、ダイナミックな天の川の撮影にはAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDを選び焦点距離は14mmに、また夏の大三角の撮影にはAF-S NIKKOR 28mm f/1.4E EDを選択した。ピント合わせはマニュアルフォーカスにした後、ライブビューを最大に拡大して無限遠の被写体で正確にピント合わせをした。夕方から撮影をはじめ、日没後最低1時間は撮影したかったので、そのための構図も重要なポイントである。14-24mmは、撮影終了時刻に主役の天の川が画面のどのあたりにくるかをスマートフォンのアプリ※などで確認しながら、また28mm は暗くなってからの撮影のため、主要な星の位置を画面上で確認するとともに、星がどう動くかを想定しながら構図を決めた。

※スマートフォンを実際の空にかざして星や星座を観測できるアプリ。日時を入力すればその場所とその時刻の状態が表示される。私は、iステラ(アストロアーツ社:有償)を使用しているが、フリーソフトもいくつかある。

写真:セッティングを完了、左側にAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDを、右側にAF-S NIKKOR 28mm f/1.4E EDを装着

[使用機材とカメラの設定:海に沈む天の川(14mm)]

レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、画質モード:RAW、RAW記録:ロスレス圧縮RAW、記録ビットレート:12-bit、露出モード:絞り優先オート、絞り:f/2.8、ISO感度設定:ISO 64、感度自動制御:ON、制御上限感度:ISO 12800、低速限界設定:6秒、インターバルタイマー撮影 撮影間隔:9秒、撮影回数:2,000枚、1回のコマ数:1、露出平滑化:ON、サイレント撮影:ON、撮影間隔優先:ON

※この中で、露出モード:絞り優先オート、ISO感度の自動制御:ON、制御上限感度:ISO 12800、低速限界設定:6秒とした上で、露出平滑化:ONとサイレント撮影:ONにしたことが、従来の測光低輝度限界を超えて撮影するための設定である。

[使用機材とカメラの設定:夏の大三角(28mm)]

レンズ:AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED、画質モード:RAW、RAW記録:ロスレス圧縮RAW、記録ビットレート:12-bit、露出モード:絞り優先オート、絞り:f/1.4、ISO感度設定:ISO 64、感度自動制御:ON、制御上限感度:ISO 25600、低速限界設定:6秒、インターバルタイマー撮影 撮影間隔:9秒、撮影回数:2,000枚、1回のコマ数:1、露出平滑化:ON、サイレント撮影:ON、撮影間隔優先:ON

※この中で、露出モード:絞り優先オート、ISO感度の自動制御:ON、制御上限感度:ISO 25600、低速限界設定:6秒とした上で、露出平滑化:ONとサイレント撮影:ONにし、暗い星まで写るよう配慮した。

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インターバル撮影と編集

「D850」にはタイムラプス動画の機能があるので、4K以下の動画で、撮影条件に確信が持てればこの機能を利用したい。ただし今回は被写体の明るさが大きく変化するとともに適切なホワイトバランスが事前には読めないため、RAW画像で記録し後で画質調整して動画化することにした。撮影は日没後しばらくしてから開始。雲が心配されたが、幸い南の方向は開けたまま空が暗くなり天の川が見え始め、期待したイメージで撮影が進む。ただし南の島の天候は変わりやすく、途中から東から雲が近づいてきてぽつぽつと雨が降り始めたため1時間あまりで撮影を終了した。予定より30分程短い撮影ではあったが470枚ほど撮影できた。タイムラプスムービーに仕上げるには、大きくRAW現像のプロセスと動画化のプロセスがあるが、今回は「D850」に搭載された画像編集メニューのひとつRAW現像を用いて処理を高速化した。500枚近い画像ファイルを、PCを用いてCaptureNX-Dで現像するとおよそ3時間かかる処理が「D850」内で一括RAW現像すると15分ほどで完了するからである。そして、静止画連番ファイルからの動画化処理はAdobe Photoshop CCで行った。

写真上:撮影データをカメラ内でRAW現像
写真下:次第に変化する空の色と、画面中央に現れてくる天の川

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