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Lesson 35:光を活かしてシズル感ある料理写真を撮る

みずみずしさやジューシーさ、音や匂いが伝わるような食べ物の写真を見たことがあるでしょうか。そんな、「おいしそう」「食べたい」と思わせる料理写真のことを「シズル感」のある写真と呼びます。
シズル感を演出するにはさまざまな方法がありますが、今回はパンケーキを例に、光を食べ物の表面にあてツヤ感を出し、さらにシロップがトロリと流れる瞬間の臨場感も伝わる1枚を撮影するコツをご紹介します。スープやソースのかかった食べ物など、ツヤ感を出して撮りたい食べ物に応用できるテクニックですので、ぜひ参考にしながら“シズル感のある料理写真”を目指してみてください。

撮影監修:斎藤勝則

この写真を撮るための3ステップ

ステップ1 盛り付けをして逆光・半逆光になる場所にセットする

パンケーキを盛り付けましょう。
おいしそうに見せるための盛り付けのコツは、立体感を出すことです。パンケーキのように凹凸のない食べ物は画作りも平坦になりがちで、何枚か重ねて立体感を出すことで構図が決まりやすくなります。さらにフルーツなどを飾り付けると彩りもより良くなります。

窓から自然光が入る場所にテーブルを置き、盛り付けたパンケーキの後ろ側から光が差すように、逆光、または半逆光になるようにセッティングしましょう。順光では被写体がのっぺりとしてしまうのに対し、逆光は食べ物の輪郭を浮き立たせ立体的に映すことができます。パンケーキのシロップやスープ、ドリンクなどツヤのある食べ物は、光が反射してできる白いハイライトが入ることでより効果的にツヤを演出することができます。

窓の一方向からのみ光が当たるように室内の電気は消しましょう。窓からの光が強い直射日光だと硬い印象の写真になるため、レースのカーテンを引いたり(カーテンの模様が映り込まないよう白く模様のないもの)トレーシングペーパーを窓ガラスに貼るなどし、やわらかな光で撮影するようにしましょう。西日は赤みが強くなり色の調整が難しくなるため、日中に撮影するのがおすすめです。

順光でセットした場合、光がパンケーキに均一に当たるためのっぺりとした印象になるだけでなく、撮影者自身の影が食べ物に落ちて暗く映ってしまうこともあります

逆光・半逆光の場合、光が当たる部分と影になる部分ができるため、この明暗により写真に立体感が生まれます。立体感が、料理をぐんとおいしく映してくれます

順光や逆光など、光を使った撮影についての詳細はこちら

ステップ2 白いボードをレフ版にして影の部分を明るくする

逆光・半逆光の光でパンケーキに明暗差がつきましたが、影になっている部分が暗すぎると写真全体が暗い印象になってしまいます。そこで、レフ版を使って影の部分が適度に明るくなるよう調整しましょう。
レフ版をセットするのはパンケーキとカメラの間。モニターを確認しながらレフ版を動かし、光の反射で暗い部分が効果的に明るくなる位置を探してレフ版を置きましょう(構図内にレフ版が写り込まないよう注意しましょう)。写真のように自立するレフ版を使うと両手が空くため便利です。

セッティングの様子

レフ版使用前
お皿や重ねたパンケーキの手前部分が暗くなっているのがわかります

レフ版使用後
窓からの光がレフ版に反射し、全体がぐんと明るくなりました

簡易レフ版を準備しよう

レフ板は反射させた光で被写体の影になっている部分を明るくするための撮影道具ですが、専用のものを買わなくても白い厚紙などで手軽に代用することができます。
今回は100円均一などで手に入るA3サイズのスチレンボード(厚さ5mm程度)を用意しました。半分に切り落としたボードの片面をテープで貼り合わせ、二つ折りにして立たせて使用します。

ステップ3 連写でシロップが流れ落ちる瞬間を撮影する

パンケーキの上をトロリとシロップが流れ落ちる瞬間を捉え、臨場感=シズル感ある写真に仕上げましょう。カメラは「絞り優先オート」にし、背景はボカしつつシロップ部分のディテールはしっかり写し撮れるF5.6~8くらいの絞り値に設定するのがおすすめです。
一番のポイントは連写で撮影すること。また室内があまり明るくない場合はシャッタースピードが遅くなりすぎないよう、1/20秒以上を確保できるようにISO感度を上げて調整しましょう。

1

iボタンを押します

2

iメニューを表示させ、レリーズモードを選びOKボタンを押します

3

[高速連続撮影(拡張)]を選び、OKボタンで決定します

4

ピントについては静止している被写体に適した設定として、「フォーカスモード」を[シングルAF]に、「AFエリアモード」を[シングルポイントAF]にしました。パンケーキの手前の角あたりにピント位置を設定し撮影しましょう。

ゆっくりと、パンケーキの中心(バターの上)あたりからシロップを流し、適宜連写でシャッターを切ります。流れている間ずっとシャッターを押すのではなく、「たらし始め」「パンケーキ上部にシロップが溜まっていく様子」「シロップがお皿に流れ落ちる様子」など何回かに分けながら連写で撮影すると、効率よく狙った画を撮影することができます。

パンケーキのシロップを上手にたれさせるコツ

シロップを流すのは一度きり(準備していたとしても何度もできるものではありません)。せっかくの撮影もそこで失敗してしまっては元も子もありませんよね。シロップの流れかたについてもある程度コントロールできるよう準備しておくのがおすすめです。
ポイントはふたつ。ひとつ目は、流したシロップが筋になってすぐに下に流れてしまうよりパンケーキ上面に溜まるとより映えるため、サラサラしたものではなくトロトロとしたタイプのシロップを用意すること。ふたつ目はお皿の奥ではなく手前側にシロップが流れるよう、お皿の下にコインなどを挟んで角度をつけておくことです。少しの手間で失敗も減りぐんと映りが良くなりますので、ぜひ参考にしてみてください。

粘度のあるシロップでゆっくりと、パンケーキの上に溜まりながら流れ落ちる様子を撮影することができました

お皿の奥側、下にコインなどを挟んでお皿に角度をつけておきます。コイン2枚程度の角度であれば、お皿が傾いているように見えることもなく自然に映ります

作例バリエーション

ギャラリー

このギャラリーでは「カメラレッスン」で撮影した作品を掲載しています。
写真の目的で絞り込んで作品を検索することができますので、この目的でどんな作品が撮れるのか参考にしながらご覧ください。

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