山田實(1918~2017)は、いま世界的にも注目されている沖縄写真の礎を作った写真家である。
沖縄戦で命も歴史も失われ、真っ白になって始まった「アメリカ世」の沖縄でカメラを持った山田實が見たものは、日常の沖縄の男や女そして子どもたちであった。そのまなざしは、なにものにもとらわれない清々しくまっすぐなものである。そして山田の写真は、社会的な何ごとかを強く訴えるものではなく、表現として強固なスタイルを構築することや目指すものでもなく、あまりにも普通のことを普通に無造作に写し出している。それは山田實というカメラを持った人間が生きてきた沖縄という日常を等価に現しているといえよう。
今あらためて山田實の写真を見ることは、占領から復帰を経てイメージ化された「美しい南の島・沖縄」に織り込まれ見えなくなった沖縄の日常の襞を掘り起こすだけでなく、山田實という写真家の「きよら」なまなざしを経験することとなるにちがいない。(ディレクター:金子隆一/写真史家)
1918年 兵庫県で生まれる
1920年 家族で沖縄に戻る
1941年 明治大学専門部商科本科卒業
日産土木株式会社入社、満州に赴任
1945年 北満州で終戦、シベリアに抑留
1953年 沖縄へ帰還、「山田實写真機店」開業
1959年 「沖縄ニッコールクラブ」結成(会長就任)
1972年 本土復帰に伴い、「沖縄ニッコールクラブ」は「ニッコールクラブ沖縄支部」に改称(支部長就任)
1978年 沖縄タイムス芸術選賞大賞受賞
2002年 写真集『子どもたちのオキナワ 1955-1965』(池宮商会)刊行
地域文化功労者表彰、沖縄県文化協会功労者賞受賞
2012年 『山田實が見た戦後沖縄』(琉球新報社)刊行
写真展「人と時の往来 -写真でつづるオキナワ」
(沖縄県立博物館・美術館)
沖縄写真家シリーズ[琉球烈像]第1巻『故郷は戦場だった』(未来社)刊行
2013年 日本写真協会賞功労賞受賞
第29回写真の町東川賞 飛騨野数右衛門賞受賞
2017年 逝去
パブリックコレクション 沖縄県立博物館・美術館 東京都写真美術館 北海道 東川町